25年前の“快挙”

「実物大・そのまんま料理カード」の1巻「手軽な食事編」と2巻「ちょっぴりごちそう編」は、25年前の1994年に発行。以後シリーズに成長し、今日でも6タイトルが販売中で、全国的に食育教材として活躍しています。

この年には、今でも版を重ねている「さくら・さくらんぼのリズムとうた」(ヒトの子を人間に育てる保育の実践 斎藤公子著)も発行、記念すべき年になりました。

新風!風穴を開けた料理選択型食育教材

「実物大・そのまんま料理カード」は、監修 足立己幸先生、調理 平本福子先生、協力 針谷順子先生など多くの支援を得て、ユニークで生き生きとした教材に仕上がりました。

実物大の繰り抜きタイプ+使いやすい紙製の料理カードが好評でしたが、何よりも料理選択型食事教育理論を踏まえ、主食・主菜・副菜による食事のコーディネートの手法を取り入れたことで、「何をどれだけ食べたらよいか」の学習が効果的に進行できること、実物大だから「目ばかり力」が身に付くなど、評価は一段とアップしました。

自ら構想し学ぶ姿勢を後押しできる食教育と、その実践のための教材の必要性を説く足立教授の考え方と、料理だけが一人歩きして、食べる人不在の出版物に物足りなさを感じていろいろ模索していた編集者魂が共鳴、いわば著者グループと群羊社との共作の成果が実を結んだともいえるでしょう。


予期しなかった1年目の惨状
初版部数は各1万部の計2万部。それくらい売らないと安い定価は無理という事情もあったものの、今から考えると「身の程知らず」。

新刊委託部数は、トーハン、日販などで約2,000部程度となりましたが、返品はすさまじく、配本後10日くらいからどんどん返品されてくる。
新刊委託以外に、社員全員が分担して首都圏、京阪神、仙台などの書店周りをして注文をもらってくるものの、これも、すぐ返品で戻ってくる始末。
新聞の1面に150万円払ってサンヤツ広告(1面の下にあるタテ3段×ヨコ1/8サイズの広告)を出しても反応は少ない。
関連学会やブックフェアで展示販売してもみんな通り過ぎていく。

これが予期しなかった1年目の惨状でした。


徐々に全国に評判が拡散
2~3年たったころから、山が崩れ始めました。メディアの新刊紹介、クチコミなどで徐々に全国に評判が拡散。
カードを使った食教育の効果が非常に高いことを実証する研究報告も相次ぎました。
栄養改善学会の展示・即売でも、人々が立ち止まってカードを見て、黒山の人だかりができるようになりました。

時代とともに栄養成分値(食品成分表)やデザイン一新。
写真は、「実物大・そのまんま料理カード 第1集 手軽な食事編」

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初版(1994年10月発行)

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改訂版(2002年11月発行)

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増補改訂版(2018年3月発行)


食育教材のメッセージ性
「出版は両翼で飛ぶヒコーキと一緒」という比喩を聞いたことがあります。
両翼に当たるのが著者と読者で、それがあってこそ出版社が成り立つのだと。

よい教材は、しっかりした著者サイドの理論とメッセージ性が、実践の担い手である意欲ある読者サイドに伝わったことが、25年のロングセラーを支えてくれたと思っています。


今ヒットしている「栄養・料理関係」の書籍を見ると、続々出る後追い企画の類書も含めてそのコンセプトは、まあひとことで言えば「便利さと効果効能」。
簡単(=時短)に美味しい料理ができて、健康になれる(=必要栄養素をバランスよくとれる)というテーマが多いようですが、食育教材の場合、そこに「一人の人間として」とか「地球にとって」とかの想いをプラスして、食卓を考える目線が必要かなと考えています。


ひつじ事典
※初版・重版・改訂版
「版」とは、本などを印刷するための原版。デジタル時代の今は「データ」と呼ばれる。書籍の奥付を見ると、初版、重版などの発行年月日が明記してある。最初に刷ったのが「初版」、売れると「重版」が作られ、印刷の回数により「1刷」「2刷」…とカウントされる。
重版で版の一部を修正した場合、改訂版とか改訂新版とか、第2版、第3版、増補改訂版などと表示。同じ書名でも内容が変わっていることがあるので、参考文献などの表示の場合は注意が必要。


※佐伯義勝カメラマン
一世を風靡(ふうび)した名料理カメラマン。
「実物大・そのまんま料理カード」シリーズのほか、多くの作品を撮影していただいた。故人。


※プロップさんのデザインワーク
面白いことに、このシリーズのデザイン担当の浮田さんの会社は、プロップという社名。
文字通り、プロップ=プロペラとして目的地を目指すフライトを誘導してくれました(ラグビーの「支柱」の意味ではなかったようです)。


※編集者の仕事
編集の仕事には、企画・取材・構成・コンテから、原稿リライト・撮影スタイリング(食器・バック材・盛り付け)・校閲・コンテ作成…など多種多様。
「実物大・そのまんま料理カード」では、編集担当の藤原勝子(創立メンバーの一人)が、料理撮影の打ち合わせや、佐伯カメラマンとの名コンビで撮影進行、様々な編集業務を引っ張りました。


(2020.1.8, M…この教材の企画・編集・制作を担当しました)